頭の上下方向の変化
一般に安定したランニングフォームでは、頭は不規則にぐらぐらと変化することは少ないので、本解析では頭を上体の動きを代表したり、他部位の基準点としたりしています。
図1は、ランナーの走行中の頭の上下方向の位置の変化を示したものです。肉眼でも観察される体の上下動を数値化(3次元で且つほぼ現実の大きさに換算)したものです。
着地のときに頭の位置が低くなり、ジャンプして両脚が空走期間(mid-air running)にある時に高くなっています。
また、ランニングの1周期の間には左右の足がそれぞれ着地するため、2つの山と2つの谷が現れます。
この山谷の高さや、他の体の動きと対応させて、動作のメカニズムを検討して、フォームの特徴を導き出しています。
膝の屈伸との関係
図2は膝の屈伸の角度の変化です。
Knee(R)は右側の膝、Knee(R)は左側の膝の屈伸角度を示し、膝が完全に伸びたときが0度、膝が完全に折り畳まれた状態が180度になります。
赤色の線の右脚の膝の屈伸の変化と、右脚の着地に着目していきましょう(数字はグラフ内と対応)。
①着地の直前まで膝が伸び、
②着地衝撃を吸収するために膝が曲がり始める。
③ほぼ着地期間の中央で極大となり、
④で再び膝が伸び始める。
この極大値となる③の時(フレーム#12)が、先に見た頭の上下動の極小値のタイミングと一致しています。
図3の実際のアニメーションの動きと比較すると、先の③はフレーム#11、#12付近に対応し、ちょうど着地している右の支持脚の大腿部(上脚)を、遊脚側の左の大腿部が追い越すタイミングになっています。
力学的に考えると、下記のように考えられます。
- 遊脚の左大腿が支持脚の右大腿より後にある間は、着地衝撃を吸収する為に膝が曲がり続け、身体は沈む
- 遊脚が支持脚より前に(おそらく重心が着地足より前になるタイミング)出たときに、初めて地面を支持足が強く押すことができるようになる
- その地面の反発力で、遊脚を前方へ振るとともに、身体を斜め前方へ加速され、上体は上昇していく
多くのランナーで、上記の動きのメカニズムは共通しています。